三谷幸喜と三人の女


三谷幸喜の作品に、女は三人しかいない。
魔性の女と
天然の女と
戸田恵子


言い換えると、


不可解ながらも惹き付けられる
しかし 高嶺の花で手は出せない
大抵の場合 奔放で思わせぶりでセクシーな女と、
手が届いて かわいくて おばかな
どっちかというと ダサめの女と、
戸田恵子


例えば、「HR」では
“魔性の女”は 篠原涼子
“天然の女”は 酒井美紀
そして 戸田恵子


オケピ!」では
“魔性の女”は 天海祐希
“天然の女”は 瀬戸カトリーヌ
そして 戸田恵子


面白いくらい典型が決まっていて
新作のたび、当てはめるのを楽しみにしています。


さて
“魔性の女”は 深津絵里
“天然の女”は 綾瀬はるか
そして 戸田恵子の、
ザ・マジックアワー」。


テレビの情報番組によると かなり興行収入があったみたいですね。
監督自身の過剰なまでのメディア露出も手伝って
いままで映画をあまり見に行ったことのない層も、映画館に引っ張っていったのだと思う。
だって、見た人のコメントに
「映画を見て、こんなに笑ったの初めて!」と
いうのがあったのだもの。


えええええええ!


いや ちょっと待て。
もっと面白い映画は たっくさんある。
とりあえず、私は 三谷幸喜第一回監督映画である
ラヂオの時間」で もっと笑った。


ザ・マジックアワー」、
三谷さんは こういうのを映画として
撮りたかったのかなあと思った。
そこは 納得した。


でも、もうちょっとシンプルになってもいいのではないかと思うのだ。


たとえば この映画が始まってからすぐ
綾瀬はるかが 言う。
「まるでこの街って映画みたい」


確かに映画の主な舞台となる街は
古き良きハリウッド映画のようなのだけど
...ありえないですから。


映画という そもそもウソの世界で、
その中で ウソをつくために 設定をつくって
見ている人に 了解を(しかも あまり上手くないやり方で)求めるなんて
ちょっと手続き踏み過ぎではないだろうか。


ザ・マジックアワー」絡みで一番笑ったのは
三谷さんが「堂本兄弟」に出て「ロマンスの神様」を歌った時でした。
あっけにとられつつ、笑った笑った。
本人は真面目にやっているのに、傍から見たら可笑しい。という
三谷さんの笑いのパターンを
ご自身が体言してらして、それが余りに見事だった。
本当に、笑った。


何百人がかりで笑わせに来た「ザ・マジックアワー」よりも
三谷さん ひとりに お腹を抱えて笑わされたのだ。
これって、どうか。


もっとそぎ落した、ミニマムな、シンプルな
三谷さんのコメディを見たいのは
わたしだけでしょうか。