雨は降らない。悲鳴が聞こえた。「雨のしのび逢い」


VHSに代わりDVDが普及することで、
ひそかに期待していたことがありました。


1)映画を映画館で見る以外のメディアが VHSからDVDに移行する
2)厚さが薄くなるので、レンタルビデオ店の棚に余裕が生まれるので
3)今までは入荷しなかったようなマイナーな映画も増える
という展開を。ですが、
3)は おりしも大人気の韓流ドラマおよびアメリカのテレビドラマが増える
でした。棚を覗くたび、そのおびただしさに後ずさりしてしまいます。


とはいえ、
4)昔の名作やマイナーな映画を入荷してくれることが 以前よりも増える
は、ありました。今日はそんな一本「雨のしのび逢い」。


工場社主の夫人であるアンヌの退屈な日常に
突然飛び込んできた女の悲鳴。
それは、情愛のもつれから殺された女性のものだった。
事件の起きたカフェでアンヌが見たのは、
死体となった女と、女に愛おしげに抱き離れない男。
そのカフェで偶然出会った 工場の元労働者ショーヴァンと、
アンヌは逢瀬を重ねるようになるが...


主演は、ジャン=ポール・ベルモンドと 個人的に大好きなジャンヌ・モロー
原作・脚本は、マルグリット・デュラス
ヒロシマ・モナムール」のごとく、
印象的な言葉と映像が積み重なり心理を描く
一枚の絵のような 1960年の映画。


女の悲鳴の意味に、アンヌはこだわり続けます。
その理由に。
でも、それがラストで分かる。
そのとき、アンヌならずとも、崩れそうになりました。


木々や 次々と灯りが点く家並みを
移動して捉えるカット、
ロングとアップのカットのメリハリなど
映像も印象的。


カフェで起きた殺人事件の現場検証をするシーンがあります。
男は当時を再現すべく
線で形どられた女を抱く真似をする。
空を掻き抱く男の姿。忘れがたい場面です。
そして、その姿をみるアンヌ。
... ある事件のカップルに重ねるように描かれる
もう一組のカップル。
物語自体の構成も上手い。
厳密に構成されているという原作を、読みたくなりました。


雨は降らずとも「雨のしのび逢い」。
原題は「モデラート・カンタービレ」。
「普通の速さで歌うように」という意味の言葉を、
映画を見た後で ぐるぐると考える。