THE・美学「エグザイル/絆」…の前に、「PTU」


広島ではまだ公開されていない「エグザイル/絆」を 旅先で見た。
それについて書くためにも、まずは勉強。
まだ2作しかジョニー・トー監督の映画を見てないので、
今週は「ジョニー・トー週間」として4本見ることにした。


まずは「PTU」(03、香港)。
商業的映画を撮って資金を貯め、
「本当に撮りたいものを撮った」という言葉が
絞りに絞った設定と独特の画をみていると よくわかる。


刑事と機動隊・PTUと特捜隊・CIDが絡まり合う物語は、
夜更けから始まり夜明けに終わる。
そんな「枠」を設定して物語を展開するという縛りに、
まず惹かれる。


物語の始まりは、とあるレストラン。
先に座っている若い男を押しのけてチンピラがテーブルを独占したところに
非番の刑事がやってきてチンピラはまた若い男のテーブルに移って...
という 緊迫感と笑いのあるシーンから ぐっと 引き込まれてしまう。
そして、突然に起こる殺人。


シリアスとそこに挟み込まれた笑いの加減が絶妙。
あるいはシリアスそのものにまぶされた笑いのセンスが独特で面白い。
刺された男が自ら車を運転して病院に行くというシーンなんて、
鬼気迫りながらも笑えてしまう。
また、残酷なシーンもひとつひとつがユニーク。
PTUがゲームセンターでチンピラを拷問するところや
男を裸にして髪の毛剃って鉄格子のカゴに入れてトンカチでゴンゴン叩いたり。
泣き笑い、な感じです。


全編夜の映画なのでほとんどが暗がりの中、
ライティングが面白い。
スポットライトのような白々とした街頭の灯りが
暗闇に沈む男たちを 束の間照らし出す。


ユニークなシーンを スタイリッシュな映像で見せる、心憎い映画。
88分という長さが また実にいいのだけれど
どうもテンポが悪いように感じるのはなぜだろう。
「エグザイル/絆」でも感じたのだが、
それぞれのエピソードを滑らかにつなげるというよりも、
思い入れたっぷりのシーンを「はい、これ。はい、次これ」と
ぽんぽん出されて 見せている感じがする。


とは言え、思わせぶりな男の子の絡ませ方など
にやっとできるところがいくつもあって
見ていて楽しい。
何より、センスのいい「監督の美学」がびしびし感じられる映画を観ることは
幸せなことだ。