そこに生きている、ということ。「タイマグラばあちゃん」


ずっと心に引っかかっている
変わったタイトルの映画があった。
たまに上映されるのだけれど、
されても短時間だったり モーニングショーだったりして
なかなかタイミングが合わず
未見のままだった。


今朝、何故か それをなんとなく思い出し、
ああ そういえば あれ、いつか上映しないかなあ... と
何気なく 横川シネマのサイトを見ると、
あらびっくり。
今 上映してる。しかも 今日最終日。まだ 間に合う。
急げ!


と 家を飛び出し、
苦節2年?、ようやく観ることができました
タイマグラばあちゃん」。


タイマグラは、岩手県の山深いところにある小さな開拓地のこと。
アイヌ語で「山の奥に続く道」「水のたくさんあるところ」という意味らしい。
そこで暮らす向田マサヨさんの暮らしを映したドキュメンタリー。
もとはNHKスペシャルの中の一本の番組に過ぎなかったが、
ディレクターがNHKを退職してタイマグラに住み
その後15年に渡って撮影を続けたという。


冒頭から、あっけにとられます。
マサヨさんが仕込む、味噌玉の 見事さに。
黄金色の釣り鐘のような味噌を マサヨさんが天井に次々と干していく。
それだけでも ほほーと 感心してしまうのに、
カメラが引くと 大量の味噌が釣り下がっているのが見える!
圧巻でした。
その他にも、ジャガイモをネックレス状につなげて
家の外壁に干しているのも
量が尋常でなく またしても驚かされます。


決して 便利でも快適でもない環境での
「食べて生きる」ために忙しい毎日。
見るからに、冬の寒さは厳しそうだし。
でも凍り豆腐は 冬じゃないとできないだろう。
できたてのお豆腐は湯気をたて 手を伸ばしたくなるほどだし、
じゃがいものお餅もおいしそうだ。
好きな時に起きて、好きな時に食べて
「極楽だあ」という マサヨさん。


厳しいけれど、生きるということが
ただシンプルにそこにある。
日頃考え過ぎで 身動きとれなくなっている自分にとって
その姿が眩しかった。


「どこも夢に見ないが、タイマグラは夢にみる」