*果敢で、美しい。「ヒロシマ・モナムール」


ヒロシマ・モナムール」(1959年)という映画がある。


原爆投下後の 広島で出会った男と女の
24時間を描く。
女は、映画のロケで広島を訪れたフランス人女優。
男は、原爆で家族を失った日本人。


マルグリット・デュラスによる脚本の科白は美しく
どの言葉も つぶやきや詩のようだ。
ヌーヴェルヴァーグの旗手であるアラン・レネ監督らしく、
物語を追うというよりも 散文詩のようで、
その時々の感情や雰囲気を
そのまま映像にして散りばめた印象。
見るというより、多分、“感じる”映画。


広島の人なら 当時の流川や紙屋町や八丁堀や
平和公園の姿も 興味深いのではないだろうか。
今はなき映画館 リッツや東映の様子が どこか懐かしく、
本通からドームへと向かう一連のカットには驚かされた。
今も残る面影があるし、まったく違うところもあって。


どちらかといえば難解と
片付けられるかも知れないけれど、
果敢で、美しい映画だと思う。


男と女が それぞれ体言しているものに気付くラストシーンは
そこに至るまでの彷徨の意味が分かり
心が突かれる思いがした。


主演女優であるエマニュエル・リヴァさんが
先日、50年ぶりに広島を訪れた。
彼女は映画の撮影時に 広島の写真を撮っていて、
昨年それが公表されたのだ。
写真展が行われ、映画も再びスクリーンで公開され、
彼女はトークショーや映画の舞台挨拶などを行い
テレビでその姿をちら、と見た。