「会わずに好きたい人もいる」(『第三の役たたず』松尾スズキ)


この言葉に深く同意。
そうなのだ。ああ 分かる。
好きな人=会いたい、とは ならないのだ。会わないままで 好いていたい人もいる。


好きな相手にもよるけれど、
握手会とか サイン会に 最近はあまり行きたいと思わない。
そういうのは 結局、好きという思いは 自分の片思いであることを
確認する場にも なるからだ。


私は こんなに好きなのに、
あの人にとっては 私なんて どーでもいいんだなあ(当たり前)。って。


あとアラーキーの写真などとっても好きだが、やっぱり本人には極力会わずにおきたい。私などとはまともなコミュニケーションをとってくれなさそうな、凡人との距離感が、なぜか「アタシ」という水位の低い一人称からひしひしと伝わる。


偶然にも、私が先ほどの“片思い”を感じたのは、
アラーキーのサイン会だった。
ハイテンションで とりまきの人と話しまくるアラーキーの姿を見つつ
サインしてもらった チロの写真集を握りしめたまま、
「彼にとって 私なんて どーでもいいんだなあ」と、思った(繰り返すが、当たり前)。
もっとも、今の松尾さんほどの人を 
アラーキーがまともに扱わないわけがないけれど。

口調、見た感じへの気配り。言ってみれば「うわべの美学」。初対面の人間と仕事をする際にはそういうものが最前列にくる訳で。その辺がおざなりな人には「甘えんなよ初対面で」という気持ちと「甘えさせろよ初対面から」という気持ちが同時にわいてどうもいけない

松尾スズキさんのネガティブが 私は好きだ。
振り返って 自分の人間力の低さを感じるけれど、
松尾さんは もう随分遠くの高いところにいるのだけれど、
なんだか 安心する。


それから 松尾さんの文章も好きだ。くねくねした表現がたまらない。町田康さんも大好きなのですが。



庵野監督へのインタビューで。

好きなもののことを話すときの庵野さんは、身振りも入ってどんどんお茶目になっていく。「そのお茶目さを。もっと! バランスよく全体的に! 配置! 配置!」会うたびに切に願う。


あと、根本敬さんにサインをお願いするため サインペンを用意してくれるよう頼む時。

「あと、なんか、マジック! あの... 先が斜めじゃない奴! あれ線が太くなったり細くなったり... 嫌っ!」


第三の役たたず (知恵の森文庫)

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