ごめんよ、TSUTAYA


今みたいに DVDやBDが同居していない、
レンタルビデオ店」が 名実共に「レンタルビデオ店」だったころ
街なかに なかなかいいビデオ店があった。
それほど店内は広くないのに、品揃えにクセがあって
マイナーなヨーロッパ映画やアジア映画が揃っていた。
何か映画を借りようと思っても 見たいものが見つからない時、
今でも そのお店のことを思い出す。
ああ、あのお店にならあったのになあ、と。
アルモドバルの「欲望の法則」とか
フランスのコメディ「ルビーとカンタン」とか エリック・ロメールとか
今私がいる環境では 見ることができないのだ。


先日も 近所のTSUTAYAに行ったものの
見たいと思っていた侯孝賢の昔の映画がなかった。
もうもう お店変える!と、一念発起して、
歩いて30分程のところにある 店構えはやたらに大きいところに 行ってみた。
長く行ってなかったけれど、
レンタルビデオ店」が 名実共に「レンタルビデオ店」だったころは
なかなかいい品揃えだったのだ。


だけど、そこは とても残念なことになっていた。
床面積が 広いことは広いのだけれど、広い分だけ 海外ドラマが棚の大半を閉めている。
その他の作品も選び方に考えがないし、並べ方には 何の考えや哲学も見て取れず、
見ているだけで気分が悪くなってしまって、そそくさと お店を出てきた。
10年前は 良かったのに。


振り返って、近所のTSUTAYAに感謝した。
実は以前 ある映画の入荷をリクエストした時に
「この作品は 他店で回転が悪いので入荷しません」という
回答をもらったため、以来軽く恨んでいたのだが
いやいやいや。
近所のTSUTAYAは がっかりなお店よりも数段いい。
最近は古い映画も積極的に入荷してくれているし、マイナーなフランスのドキュメンタリーも 昭和の名監督たちの代表作も
だだだっと入れてくれていた。
なんて ありがたいんだ。


そんなことを思い出していると、近所のTSUTAYAに 感謝の意を伝えたくなった。
スタッフの手を両手で握って ぶんぶん振って
「ありがとう!」っていうのはどうか?
でもそれでは 単なる変な人だ。
その代わり、せめて 古かったりマイナーだったりするタイトルを
私が借りましょう そうしましょう、と思う


葉桜手前の春の午後でした。