パスタを作りながら思い出す「イエスタデイズ」

tera_172008-12-15

今日の半額食材は、60円!のブロッコリー
そう簡単に安い国産のブロッコリーが手に入ることがないので、
買えると作りたくなるのがパスタです。


最近パスタを作っているとどうも思い出してならないのが
2008年の「イエスタデイズ」という映画。


余命僅かな父親からの依頼は、別れた昔の恋人を捜すことだった…
本多孝好の短編小説を映画化したもので、
父子もの という感触です。


監督の若さに驚かされます。31歳かあああ。
大勢のスタッフをまとめあげ、
映画をつくりあげるという大事業を成されたことに、敬意を表します。
主人公が病院に入院する父親を尋ねていくたび、
すこしずつ 二人の距離が狭まっていく様子を
座る位置の変化で見せる演出など、
あせらず丁寧に作られた映画だという印象を受けました。


主人公は父親から託されたスケッチブックの力で、
過去へさかのぼり、若い頃の父親と当時の彼の恋人に出会うのですが、
この恋人役の原田夏希が かわいいことかわいいこと。
ドラマ版「ハチミツとクローバー」のあゆ役などで見かけていましたが、
この映画での彼女は 役柄とも相まって聖母的な雰囲気。黒髪が素敵です。


既にPVなどを撮影されたきた監督らしく、
カメラがきっちり固定されず 画面は 常に少し揺れていて、
ハイキー気味できれい。
でもだけど、それだけに気になる部分が。


過去と現在を行き来するという、SFなこの物語。
そのため、細部の積み重ねで世界観にリアリティを感じさせることが
物語に説得力を与えるために大切だと思うのですが、
映画を見ていて 過去の世界の作り込みが足りない感じがしました。
ラベルで年代を感じさせられるはずのテーブルの上の缶ビールは
2本とも画面の奥を向いているし、
吸っている煙草のケースも見えません。
特に煙草は銘柄について原作でも触れられているので、
見せてほしかったところです。


で、料理が好きという主人公が パスタを作るシーンがあるのですが、
ここを最近いつも、
自分でパスタを作る時に思い出してしまうのです。
主人公がフライパンのオイルの中に
大量の唐辛子「だけ」を入れて、ひたすら熱してる。
しかも、たぶんこの時はニンニクも一緒に入れた方がいいはず。
スクリーンの前で「唐辛子多いよ! ニンニク入れようよ!」と
じたばたしてしまいました。うー。
大したことではないのですが、画面がきれいなだけに
そんな細かい部分が気になってしまう。


でも、リアリティは細部に宿る、と聞いたことがあります。


ブロッコリーをにんにくと唐辛子で炒めた後、
パスタのゆで汁を加えて
くたくたになるまで柔らかく煮てから
スプーンで砕きます。
緑色のソースと ゆであがったパスタとあえて
できあがり。なのですが、


意識し過ぎたからか
少し唐辛子が多かったようで、
辛めにできてしまいました。

丁寧に作られているし、悪い映画ではないのですが
私にとっては あまりのめり込める内容ではありませんでした。
過去をさかのぼって、父親の本心を知って… なんて ちょっと甘い。
過去をさかのぼるなんてできないから、
人は 現実の世界で もがいて生きていくのだと思うのです。
原作もそうなのかと思って読みましたが、
映画での<いま明かされる真実>といった展開はなく
もうちょっと ほろ苦い話でした。
現実なんて、そんなものさ。
でもこれは、諦めや絶望ではなく、希望なのですよ。