後半の演出にがっかり。「落語娘」

ところで、
中原俊監督の「桜の園」は、私の好きな映画です。
ある高校演劇部の一日を描いた物語で、原作は吉田秋生


屋上に佇む つみきみほの 冷たい水のような新鮮で鋭い表情、
好きな女の子と肩を寄せ合って だんだんカメラに近づいていく中島ひろ子


「あの時にしかない一瞬」の女の子たちの表情と
彼女たちを包むこむ校舎の、光と影の感じ。
どきどきしました。
桜の咲くころになると、思い出します。


なんとそんな名作が、同じ監督の手により
リメイクされるとか。
どんなふうになるのか 期待していましたが、
今では なんとなく不安な気持ちです。
というのは、「落語娘」をみたから。


中原俊監督の最新作、
ミムラ好きな方は 満足かも。
すごく頑張っているから。
見せ場もたくさんあります。でも。


結論から言えば、映画そのものには
がっかりでした。


新米噺家を演じるミムラには、張り切り具合に ちょっと好感。
伊藤かずえが、なんだか面白い次元に いっちゃってる。
女の人が落語の世界で生きている様子は興味深い。
女だからとナメられたり セクハラされたり 大変そう…
見られたのは、そのくらいでした。


気になったところは 3つ。


画面の透明感のなさ、古くささ。
ところで パスタのお皿があんなに大写しになってたのは
どうしてなのでしょう。
何かの伏線かと思いました。


映画の中で役者が演じる落語が やはり笑えなかったこと。
この映画も例外ではありませんでした。
もし 本当に笑える噺が映画の中で演じられたら、
並々ならない説得力を持つのではないかと 思うのですが。
ミムラさんがいくらがんばっても、
きっぷのいいお嬢さんが気合入れてるという域を越えないように思いました。


何より 残念だったのは、
この映画のラストで演じられる伝説の噺とやらを
ミムラの師匠役・津川雅彦に演じさせるのではなく、
別の役者を立てて 再現フィルムにしてしまったこと。
それほど興味の惹かれない この映画のプロット(すみません…)で
映画として「見せる」ことができる唯一のシーンといえば、ここくらい。
しかも それほど面白いとも言えない噺(すみません…)なのだから、ここはせめて
努力したという津川雅彦のしゃべりを 見たかった。
そのためか、津川さんには 噺家としての見せ場がなく、
妙に多い好色なシーンと相殺できていなくて
単なるいやらしいオヤジ以上ではなかったのが
残念です。
どうして こういう演出にしてしまったのか。謎です。


果たして
18年ぶりの「桜の園」は どうなってしまうのか。
どきどきです。