誰も一人にしてくれない


行く前に小耳にはさんでいたけれど、
ロッコは本当に一人になれない場所だった。
一人旅だったこともあるだろうが、どこに行っても声をかけられるし誰かがついてくる。
その都度意思表明し、あしらったり断ったりしないといけない。
周りに流されていると、
自分の好きなところには行けないし自分のしたいことができないのだ。
10年以上前に教わった「一人にしてください」という意味のフランス語が
脳の奥深くから出てきたのには、我ながら驚いた。


いやいや。
ロッコでは沢山の親切も受けたし助けられたし、いい出会いもあった。
だから話しかけてきた人を穿ってみてしまう自分が 嫌になることも度々あった。
でも丸腰で信じてみると思いがけないことになったりして
その振り幅にはまいったのも正直なところだ。
ロッコの人とのやりとりを楽しむには
私の心の余裕が足りない時もあった。ごめんなさい。


もう2度と来れないかもしれない場所を自分なりに楽しみたいだけなのに。
なのに
しつこくついてきて貴重な時間にぐいぐい食い込んでくる何者かの存在に
何とか断りを言いつつ早足で通りを抜けながら
「頼むから大金払って確保した私の時間を 私の好きな様に使わせてくれよ…」と
思ってしまった時、おおげさな話だけれど
人生という奇跡的に確保した私の時間を
私が使いたいことに大切に使わないといけない。と気付いた。
ようやく。心から。


私の時間は徹頭徹尾、私がしたいことで埋めなくてはいけない。
そう教えてくれたモロッコ
いろんなことがあったけれど
やはり私は好きだ。